またも腕を掴まれ、前に出した足はしゃかしゃかと空を切るだけ。
一向に前に進まない。
「確かに顔はいいけど、それだけじゃないか。僕みたいに頭がいいわけでもなく…お金があるわけでもない。本当にただ顔だけの男…」
「それ以上仰いますな」
「…え…?」
「…それ以上あの人のこと、悪く仰いますな。今回のお話を破談にしてでも、あなたを許しませんよ」
「…!」
父様に怒られようとも。
なにがどうなろうとも。
かっくんのことそんな風に言うの、許せない。
「お忘れですか? あの人はもう藤峰のものです。侮辱することがどれほどのことか、ご承知の上と思ってもよろしいでしょうか」
「っ…」
イライラしてしまっているあたしは、思いっきり“藤峰家”をかざしてしまった。
でもね?
お金がどうのだとか言うこの人には、これが一番だと思うんだ。
「お放しください。私に触れることは一切許しません」
「…くっ…」
本当は、貴族の末裔だからって触れちゃいけないとかそんな古い話もうない…なんて普段言ってるくせして、今はその誤解に助けられた。
ゆっくりと放された手をパッと引っ込めて、またも踵を返し……今度こそ中へ入ろうとした、そのときだった。
―ガッ
「!?」
「それでもだ」
「え…!?」

