思わずぽつんと呟いて、屋敷の玄関を出た…らば。
「やあ。来てくれると信じていたよ」
「……は?」
今しがた会いたくないと思っていた人に。
いきなり会ってしまった。
「肇…様」
「優しいんだね。使用人を使わずにわざわざ届けてくれるなんて」
「いえ…。これ、肇様のものでしたか。では…」
…持ってきたくて持ってきたわけじゃないやいっ。
しかも……わざとだね?
わざと置いてきやがったわね?
「ああ、待ちたまえ」
「……なんでしょう?」
くるりと踵を返したあたしの着物のそでをがっしと掴む。
一瞬思わず眉をしかめたが、愛想笑いで振り返った。
「君……あの男と離縁する気、ほんとーにないのかね?」
「は?」
あの男…と離縁?
ってかっくんのこと? なに馬鹿なこと言ってるのこの人。
「いーえぇ。愛していますので❤」
これ見よがしにそう言うと、やんわりとそでを掴まれていた手を離す。
「では、失礼しますね」
にっこり笑って言うと、しゃなりしゃなりと家の中に舞い戻っ…。
―しゃかしゃかしゃか
舞い…戻…。
…らせろよ。

