秘密のMelo♪y③*ウィーン編㊤*


―――……


「はふ~…ちかれた…」


谷川様方がお帰りになってからようやっと息をつく。

ぐでーっとソファに倒れ込むあたしに、父様が言った。


「あ。……この万年筆……誰の?」


「え? 知らない」


「谷川って彫ってある。お忘れ物じゃないか! おいおいまおやい、届けておいで。まだ門を出ていないはずだ」


「なんでまおが!?」


疲れたって今言ってるのにっ。

ぐでーっと倒れ込んでるのにっ。

そんないたいけな娘に?


「ふっ…。馬鹿だなお前。今は会社も藤峰家も私が取り仕切っているが、いずれはお前達が動かすこと。次世代を担うお前が積極的に前に出るのは当たり前だいっ!」


「つまりはめんどくさいのね」


「うん。簡単に言えば」


じゃあ最初からそう言えよ。


「ハア…もう。仕方ないな…」


「一人で行けるのか? 迷うなよ」


「大丈夫大丈……失礼じゃないそれ」


心配してくれてるんだか馬鹿にしてるんだかどっちですか。

確かに暗いし広いけどさ。

迷わねぇわよ。あくまで家だから。


「んじゃ行ってきまーす…」


ぽてぽて歩いて、玄関へ向かった。


「あ…。あの人に会ったらやだな…」