―――……
「はふ~…ちかれた…」
谷川様方がお帰りになってからようやっと息をつく。
ぐでーっとソファに倒れ込むあたしに、父様が言った。
「あ。……この万年筆……誰の?」
「え? 知らない」
「谷川って彫ってある。お忘れ物じゃないか! おいおいまおやい、届けておいで。まだ門を出ていないはずだ」
「なんでまおが!?」
疲れたって今言ってるのにっ。
ぐでーっと倒れ込んでるのにっ。
そんないたいけな娘に?
「ふっ…。馬鹿だなお前。今は会社も藤峰家も私が取り仕切っているが、いずれはお前達が動かすこと。次世代を担うお前が積極的に前に出るのは当たり前だいっ!」
「つまりはめんどくさいのね」
「うん。簡単に言えば」
じゃあ最初からそう言えよ。
「ハア…もう。仕方ないな…」
「一人で行けるのか? 迷うなよ」
「大丈夫大丈……失礼じゃないそれ」
心配してくれてるんだか馬鹿にしてるんだかどっちですか。
確かに暗いし広いけどさ。
迷わねぇわよ。あくまで家だから。
「んじゃ行ってきまーす…」
ぽてぽて歩いて、玄関へ向かった。
「あ…。あの人に会ったらやだな…」

