――真裕サイド――


『い、今何時?』


ここからパリまでってどんくらい?

あたしそういえば、今日お仕事があったんだ! パリで…。


『五時までに行かなきゃなんないんだけど』


『五時!?』


五時半からなの。お話合い。

それまでにね、お着物着たりとかしなきゃなんないんだよ。

今日のは会社じゃなくて藤峰家のことだから、次期当主であるあたしも出なきゃならない。


『今四時前だけど……それ無理でしょ…』


『む、無理じゃ困る!! そ、そうだわ。野木さんに最速のジェット機調達してもらって…! ギリギリまですっ飛ばしてもらえば…!』


『ふ、藤峰家恐るべし…』


でもウィーンからパリってそんなにかかんないよね?

今あるやつでも行けるかな。


「わああんどうしようどうしよう~!」


―ピルルルルー


どたばた慌てていると、突然携帯が鳴り響いた。

気付かないあたしに代わってかっくんが当たり前のように手に取った。


「はい?」


『おおお! 楓くんではないかっっ! 現在は私の息子の楓くんではないかっっ!』


「真裕なら今テンパってますけど」


ん? 父様?

今すんげー大声したけど、父様?


「あちょいとかーしてっ」