おろおろしているのはなぜかアッシュだった。


『日系がだいぶ入ってはいるけど、元々フランス人の家系なのよね』


『すごぉいメイリーどうして知ってるの?』


『…案外誰でも知ってるわよ』


『あれ…。そなの?』


きょとんと首を傾げて、なぜか振り返って俺に確認する真裕。

だからなんで俺に…と思ったけれど、まあ真裕ならいい。


あいつは、完全に俺に頼り切ってはいるものの、かと言って依存しているわけでもない。

いなきゃいやだの寝られないだの言う割には、たぶん意外となんでもできるんじゃないかと思う。

甘えたいだけなんだろうから、俺はいくらでも付き合ってやれる。


ここに来る前ふと修平が聞いてきたときにそう答えると、「お前もまあ…懐のでっかい男やなぁ…」としみじみと言われたが。

なに言ってんだバカ野郎。

あいつと付き合っていこうと思ったら、そのくらいのことできずにどうする。

これが普通じゃなきゃやっていけない。

俺は、それでいい、それがいいと思える。

だから互いにうまいことやっていけるんだろうよ。

相性というやつはつまりそういうことなんだと思う。


『今日はケインのところ、行けるわよね?』


『うんうん。行ける行け…………ない!! 行けないじゃんか今日!』


『あらなんで?』


ハッと何かに気が付いたようで、勢いよく立ちあがりながら叫ぶ。

あわあわするだけの真裕をとりあえず座らせた。


『ど、どうしよう。お仕事が…』


『仕事?』


…そういえばこいつ……。

もう仕事に関わってんだっけ…。