「真裕様? 真裕お嬢様、出発のお時間ですが……どちらに? お嬢様~」
……はっ…。
野木さんの呼ぶ声に我に返り、慌ててかっくんから離れた。
「じ……じゃあ行ってくるね、かっくん…」
不安さは拭い切れないものの、なんとか目を見てそう言えた。
かっくんは柔らかく笑って、あたしの頬を指で撫でる。
「……ああ」
そう答えてくれたかっくんに自然と笑いかけ、きょろきょろとあたしを探しているらしい二人のもとへ向かった。
「あらお嬢様、そちらに? …あら? 星野様は…」
「うん。行こ」
「…?」
きょとんと首を傾げる坂本さんに抱かれている梨音。
まったく同じポーズをしてたので、ちょっと可笑しかった。
「おいで、梨音…」
言いながら両手を伸ばすと、かっくんの匂いがするのか……嬉しそうに飛び込んできた。
「梨音もさみしいね。しばらくお別れだねぇ」
「くうん」
「…ね」
ちら…っとかっくんのいる方を振り返ったけど、坂本さんに促されてすぐに機内に乗り込んだ。
かっくん…行ってくるね、かっくん――。

