――楓サイド――
『マヒロマヒロ、違うのよ。これをね、こう突っ込むの』
『えっ……タオル濡れちゃう』
『いいのよ。これはタオルじゃなくて、濡らすためのぞーきん。分かる?』
『分かんない』
当たり前だわな。
真裕が掃除なんてことをするわけがない。
まして雑巾なんか見たことも聞いたこともあるとは思えない。
『これをー濡らしてー、汚れを拭くの。やってみる?』
『やってみる!』
楽しそうに頷いて、メイリーから絞ったそれを受け取り、壁をちまちま拭き出した。
真剣そのものの表情ながらも、ほんの数センチほどしか取れていないあたりが…。
『可愛い…マヒロ…』
「……」
『……ハッ…!? カカカカエデの気持ちを代弁っ…』
「……」
アッシュは。
誰かに似ている気がする。
アホさ加減は間違いなく修平。
でもこのごまかし方は完全に花梨のような…。
世の中案外狭ェ。
真裕はそんな世の中を渡り続けてきて、これからもやっていくんだろう。
だからか? あのシビアさは。
理由がなければしない。意味のないことに時間は費やさない。
もっと有効に使う術を探すべき。
そういう考えに思う。
実際あんなでかい家を動かそうと思ったら、白黒はっきりしてなきゃなんねーんだろうし…。

