―――……


『ところで…さ、マヒロ』


『うん?』


お昼休憩、(いつものように)かっくんの膝にちょこんと座ってなんかよく分からないパンをちまちまかじるあたしに、もう見慣れたと言わんばかりの余裕さでメイリーが口を開いた。


『なんとなーく…聞いちゃいけないことだとは分かるんだけど…聞いていい?』


『あー日本に帰った理由?』


『で!? バレた! マヒロのくせに鋭い!』


あたしのくせにてなんですか。

どういう意味ですか失礼な。


内心そのへんが気になりながらも、一瞬迷ったけど一応話すことにした。

ここにいるみんなは別に、言いふらしたりはしない。

…と思う。


『さっきのシュンが言ったことと関係あったりして…?』


『わあ。アッシュのくせに鋭い』


『“くせに”!?』


だってまおもさっきそう言われたんだもの。


正直言って、悲しみや喪失感はまったく癒えていない。

普通の…今まで通りの生活を送るのが精いっぱい。

いい思い出に浸りたいけれど、思い出したくない。

思い出して……もういないということを思い知らされるのが嫌なんだ。


『あんねー…。まおの母様、先月亡くなったんだ』


『……へ?』

『え…』


…でも。

…でも、それは動かしようのない事実。

受け入れるしか、ないんだ…。