秘密のMelo♪y③*ウィーン編㊤*


――楓サイド――


……おせぇ。

なにが『おほほ借りるわねぇ~♪二時間くらいで帰るわっ』…だ。

もうすでに四時間は経っている。

なにをどうすればこんなに時間がかかるんだよ…。


一人家に取り残された俺は、イライラと時計を睨みながら真裕(と母)の帰りを待っていた。

昼の一時ごろに出て行って、今はすっかり夕方。

西の空は朱に染まり、気温も下がってきた。


「ハア…」


思わずため息をついてドッとソファに座りこんだ。

なにも……嫉妬しているわけではない。

時間が倍過ぎたからと心の狭いことを言っているわけでもない。

あのお袋は元々そうだから、初めから二時間で帰ってくるとはこれっぽっちも思ってねぇし。

ただ……ただ、心配してやってるだけだ。

母親の件があって以来、どこか暗いままの真裕を。

一週間ほどまったく眠らなかったし、今でも寝たり起きたりと結局睡眠時間はほとんどない。

時々、思い出すのか悲しげな表情になる。

今にも泣きだしそうな…儚げな表情に。


そうそう立ち直れるわけがねぇんだ。

それは俺もお袋も分かっていることで…だからこそ、気分転換のつもりで連れ出したんだろう。


家に連れてきた日、話を聞いてお袋は、泣きながら言った。


『代わり……っていう言い方は悪いけど、それでも代わりになってあげたい。どんなにかつらいことでしょう。少しでも…救ってあげられたらいいのに…』


真裕とお義母さんの運命はあまりに酷だ。

真裕もさることながら、お義母さんも相当つらかっただろうと思う。

ひょっとすると…今も、苦しんでいるかもしれない。

母親と娘というものは、親子の中でも特別だという。

互い思いを言い合えぬままに永遠に分かたれた。

真裕の心中は計り知れない。