――楓サイド――
あれから二時間ほどだろうか。
今は、日本に向かう機内。
もう夕方を過ぎていたし、真裕はいつもなら寝ていてもおかしくはない。
でも…さすがに今日はそうもいかず、今にも泣きだしそうな顔でうつむいて、震える手でしがみついてきていた。
『あまり気を張り詰めるな』
何度そう言おうと思ったことか。
だが今は、何を言っても無駄だろう。
気休めにもならない言葉をかけるより、委ねてくる体を…心を、ただ抱きしめてやることしか、俺にはできない。
「…喉…かわいた…」
「ああ…飲むか?」
ふと呟いた一言。
すぐそこにあったコップを手に取って、差し出した。
そのコップを受け取った真裕の手は危うく揺れていて、思わず手を添えた。
「……?」
…気のせいか?
震えが……止まったような…。
「かっくん……」
「あ? ああ…」
「ずっと、このままがいい…」
「……ああ」
手を握っているだけで少しでも不安が安らぐなら。
やっぱり俺は、黙って抱きしめていてやろう。
「ああ…」
…頼む。無事でいてくれよ…。
これ以上こいつが悲しむことは…ない。

