薬指に光るモノ




翔太が話をそらすのも、珍しいことだったから。



やっぱり何かあったんだと、そう思った。




それからは何分間か、他愛のない話を続けていた。



と言っても、ほとんど話していたのは翔太の方だったんだけど。



いつもは受け身なはずなのに。




「……桃花?」



「っ…え?」



翔太の話を聞いているうちに、いつの間にかぼんやりしていたようで、


気付けば翔太に顔を覗き込まれていた。




「ボーッとしてたけど…?」



「あ、な、何でもないよっ」



あはは、と乾いた笑い声を出して誤魔化した。




「…そう。」



そのあとも何でもないように話し始めるのかと思ったら…、




「桃花。」



先程とは全く違う、真剣な表情を見せた翔太。



そのせいか、周りの空気も一気に冷めた気がした。