京の大きなお寺の庭でぽつんと空を見る少女がいた。
彼女こそ、薄連涼香。

「お~い、涼香」

涼香を呼んだのは、お寺の神主である佐上京谷さんだった。

「は~い、何でしょうか?」
「お使いを頼みたいんだが、いいかい」

涼香は、明るい声で返事した。

「はい。わかりました!」

そのお使いの帰りに、涼香は見覚えのある黒猫にあった。

「よしよし、もうけがは大丈夫?」
「にゃ~」

それは、何日か前にけがをしていて助けた黒猫だった。
「あ~もう、かわいい。でも、この黒猫どこかで会ったような」

気のせいよね。あ、いけないそろそろ帰らないと涼香が行こうとした時、さっきまでいたはずの黒猫の姿が消えていたのだ。

「ねえ~どこにいったの黒猫さん。帰っちゃったのかな?」