「見えるね・・・。少なくとも、私には・・・。」


 男の笑みがますます深くなったと思ったそのとき


“ミコト、その男の心臓を突き刺せ”


 ・・・・男は、決定的な呪文を唱えた。


 古代アラビア語。


 ここにいる中では理解できたのは、自分ぐらいだろう。


 もはや、聖水どころの話ではなかった。


 悠人は、咄嗟に自分の右手を由良の心臓と美琴の間に挟む。


「ぐっ!」


 とたんに、襲い来る激痛。


 美琴さんが、持っていたナイフが自分の腕を突き刺したのだ。


 よく考えたら、こいつを突き飛ばせばよかっただけの話じゃねぇか・・・。


 何やってるんだ、俺・・・。


「悠人!」


 由良の叫び声が聞こえる。


「騒ぐな・・・コレぐらいかすり傷だよ。」


 必死に笑ってみるが、正直、メチャクチャ痛かった。


 少しは手加減しろよな・・・美琴・・・。