「おい、俺なら大丈夫だ。ここは要求を呑め!」


 おそらく相手の要求は怨恨だろう


 こんな商売柄、自分に恨みを持っている人間は星の数ほどいる。


 だとしたら、ここは俺一人が出て行けば丸く収まる。


 いつか、こんな日が来ると思っていたんだ・・・。


 だけど、関係ない真琴まで巻き込んだ罪ぐらいは償ってもらうぞ。


「なんだよ、お前までそういう趣味なのか!」


「違うわ、馬鹿!ここは、真琴を助けるのが最優先だろう!お前、冷静になれよ!」


 まったく・・・。


 最初、自分を止めたときは、意外に冷静だと思ったのに、簡単に挑発されやがって・・・。


「そっちの君は頭の回転が速くて助かるな。」


 男の感心するような声。


 うるせぇ・・・真琴がそこにいなければ、今すぐにお前の首をもぎ取ってやるところだ。


「いいから、真琴を離せ。話はソレからだ。」


「その刹那に、私の首でももぎ取るかね?」


 ちっ・・・さすがに、ソレぐらいは読まれるか・・・。


「そんなことしねぇよ。お前、俺がそこまで信用できない男に見えるのか?」


「見えるね・・・。少なくとも、私には・・・。」


 瞬間、男の笑みがますます深くなったのが見えた。