「なっ・・・できるか!お前こそ、呼び出されたのは俺だぞ。お前こそ帰れ!」


「そんなの、何かの手違いに決まっている。相手の狙いは俺だ。だから、この場所を指定したに違いない。」


「何を言っている?だいたい、お前には先咲さんという人が・・・。」


「私なら、ここにいるけど?」


 由良がソレを口にした瞬間、その声は後ろから聞こえた。


「先咲さん!」


「美琴さん!」


 二人の声が重なる。


 今日から名前で呼ぶコトと決めたとは言え、なんとなく照れてしまった。


 もちろん、今はそんな場合でないことぐらい分かっているが・・・。


「どうして、美琴さんが、こんな場所に?」


 悠人聞き。


「先咲さんまで、こんな場所に来ちゃいけない。さっさと帰るんだ。」


 由良も疑問を投げかけた。


「いや・・・だって、真琴は私の友達だし・・・こんなの見せられちゃ、来ないわけには行かないって言うか・・・。」


 言われて、彼女が取り出したのは由良の机に入っていた脅迫状。


 なんで、美琴さんが、ソレを・・・?


 疑問に思った由良はポケットの中に手を突っ込む。


 右手が、何も入ってないポケットをさまよった。


 ・・・・・・・・落としてきてしまったのか。


 なんと言うことだろう。


 そんな、凡ミスを起こしてしまうとは・・・。


 悠人は、あまりのとぼけっぷりに、自己嫌悪に陥り、思わずしゃがみこむ。


 瞬間だった。