「あの野郎!」


 刹那、二人の耳にガタンと言う大きな音と、殺気めいた男の声が聞こえる。


 もちろん、聞こえたのは二人だけではなく、教室中のみんながそちらに顔を向けたのだが・・・その先にはすごい剣幕をした由良がいた。


「由良?」


 悠人は顔をしかめて、そちらを眺める。


 彼の手元には一枚の紙切れ。


 ソレを睨むように数秒見つめたかと思うと、由良は慌てて教室を飛び出して行った?


「どうしたんだろう?」


「さぁ?」


 気になった悠人は由良の席に足を運び、そこで落ちている紙切れを拾い上げる。


「なっ・・・。」


 そして発見する。


 小松さんの誘拐写真と、脅迫状を・・・。


 美琴さんのさっき言葉が頭をよぎる。


 ・・・・・・・『もっと良い方法』・・・・・・。


 こういうことか!


 悠人は、頭に血が上るのを感じた。


 どうして、由良に脅迫状を送ったのかも検討がつかない。


 だけど、そんなことは関係ない。


 とりあえず、今この脅迫状を見て、アイツは飛び出して行った。


 どこに向かったのかも、分からないはずがない。


「あの馬鹿・・・。」


 一人で行って、何をする気だ。


 悠人は慌てて、紙切れをポケットにしまうと、教室を飛び出す。