「え?ちょっと、これからなのに・・・。」


 名残惜しそうな、真琴の声。


 気持ちはわかるが・・・。


「良いから、良いから・・・。」


 言いながら、由良が真琴を連れてきたのは、保健室から教室へ向かうためには、どうしても通らなければならない昇降口。


「こんなトコロにつれてきて、どうするのよ?」


「決まってるだろう?悠人を尋問するんだよ。」


「え?」


 真琴は、その発言に意外な表情を浮かべたが、その瞳はとても輝いていた。


「え?いけないよ。そうのって脅迫って言うんだよ。犯罪だよ。」


「んじゃ、真琴は帰りなよ。」


「やだ。」


 即答か。


「だったら、おとなしくしていろ。」


 そして、待つこと数分。


 間抜けな顔した男が焦り気味に昇降口に姿を現す。


「捕まえた!」


 とっさにつかんだのは、首。


 そっちの方が、絶対相手は驚くと思ったからだ。


「!」


 慌てて身を翻そうとする悠人。


 そうか行くか!


 由良は、とっさに力を込めて、両手でつかんだ首を腕にまわして、ヘッドドロップの姿勢をとる。


 このとき、二人は必死で気がつかなかったが、二人して常人ではなしえないスピードと技を繰り出したのだ。