「質問しているのはこっちだ。俺が何者であるのかは、この際、どうでも良い問題だろう?」


 ・・・らしくない。


 心から思う。


 だけど、同時に思うのだ。


 ・・・・・・・・・・・・彼女を助けたい・・・・・・・・・と。


 まったく、馬鹿馬鹿しい・・・。


「そう・・・それも、そうか・・・。」


 先咲さんは、大きく息をつくと・・・。


「私も、私のマスターは分からないの。」


「え?」


 あまりにも意外な答え。


 すっかり、学校に潜む魔道師・・・つまりは自分を探るための密偵だと思っていたのに・・・。


「たぶん、相手はマスターなのだろうけど、夜の記憶は毎日消されているの。」


「!・・・なんだって!」


 思わず、大声が出そうになって、必死に抑えた。


 確かに、有力な方法ではある。


 本人が黙秘しようが、相手の記憶を探る方法なんていくらでもある。


 いつ、捕まるとも分からなければ、毎夜記憶を消すのは、有効的な手段と言えるだろう。


 しかし・・・・・・・・・


 ・・・・・・・・・・・なんという、非人道的・・・。


 なんと言う、残酷な方法なのだ・・・。


 ・・・許せない・・・。