~悠人~



 1時間目終了と同時に、悠人は教室を飛び出し保健室に向かった。


 中に入ってみると、ベッドで眠っている先咲さんの姿を見ることができた。


 昨日は、その姿に油断して騙された。


 同じ鉄は踏まない。


 悠人は静かに、先咲さんが眠っているベッドに近づき、脇においてあるパイプイスに腰掛ける。


「何?私を殺しに来たの?」


 反応は、腰を下ろした瞬間。


 先咲さんは自分の方に顔を向けることなく、布団に顔をうずめたままだ。


「その逆だといったら?」


「余計なお世話よ・・・。」


 そっけない答え。


 もしかしたら、本当に気分が悪いのかもしれない。


 だとしたら、長居はできないな・・・。


 さっさと本題だけ話して立ち去るコトにしよう。


「先咲さん・・・君のマスターは誰だ?」


 単刀直入に聞いてみる。


 しかし、その声はいつもの桜沢悠人ではない。


 先咲美琴と対峙するのは、極東のハグレ魔道師ティアム。