ソレを聴いた瞬間、あまりに嫌な汗が悠人の背中を流れたのが分かった。
悠人の頭に浮んだのは昨日の影。
シャーリーの報告にあったニンジャ。
先咲さんが、自分の予想通りの存在だとすると、学校の中で自分の目が光っている以上は、どこにでもいる普通の高校生だ。
だけど、ニンジャまでそうであるとは限らない。
アイツは、常人ではない。
強化された先咲さんに軽々と追いつき、あまつさえ優勢をとるなんて、並みの人間ではない。
そんなヤツが、一人になった先咲さんに手を出さないとは限らない。
彼女が危ない。
一刻も早く、彼女の元に行かないと・・・。
「あ、俺お見舞いに・・・。」
何かとかっこつけて立ち上がろうと悠人がしたところ・・・。
「悠人く~ん・・・お見舞いで好感度上げようとする気持ちは分かるけど、女性の寝顔を見に行くのはよくありませんよ・・・それよりも、数学の宿題をお願いします。」
手をつかんだとは、由良だった。
そういう場合じゃないんだよ!
あ~もう!
「分かったよ。宿題を終わらせれば良いんだろう?」
おとなしく席に着席していささか乱暴気味に数学のノートを広げる。
「大丈夫だって、美琴はしょっちゅうそうやって授業サボっているんだから・・・。」
あっけらかんと言い切る小松さんが何の事情も知らないことを全身で証明しているようで、羨ましかった。
こうして悠人の不安は残ったままチャイムが鳴り、長い一日の一時間目が始まる。