「!」


 直感だけで、その場から退く。


 日ごろから使い慣れている由良だから分かった。


 サイレンサーをつけているが、今のは・・・銃声・・・。


 誰だ?


 由良は神経を研ぎ澄ます。


 撃たれた弾の軌道から相手の位置を探る。


 ・・・・・・・・・いた。


 自分が立っているの家の屋根から少しはなれた緑色の屋根の上。


 そこで自分を睨みながら、銃口を構える一人の女性。


 ・・・・・・・・・目を疑った。


「先・・・咲さん?」


 思わず、声が出る。


 満月を背にして銃を構えている、その姿は間違いなく自分が今忍び込もうとしている家の主。


 ・・・・・・・先咲・・・・・・・美琴・・・・・・・本人である。


 だが、その姿は自分の知っている先咲さんではない。


 隙のない構え、ここからでも伝わる殺気・・・。


 昼間の黒ずくめの男の言葉が頭をよぎる。


 ・・・・・・・・・あなたと同じ、種類の人間ですよ。


 確かに・・・こいつは、魔女というより、暗殺者だ。


「先咲さん・・・どうして・・・?」


 返事の変わりに銃声が再度由良の耳を襲った。


 瞬時に避けるが、肩に少し弾がかすった。


 話し合いをする気は毛頭ないと言うのは、彼女の態度を見れば分かる。


 ・・・・・・・・そういうことか。


 ならば、仕方ない・・・。