「!」


 その腕を先咲さんにつかまれた。


 マズイ。


 必死に伸ばした手を引こうとするが、思いのほか、先咲さんの力は強く、読書が趣味の非力な悠人に、引っこ抜けるはずもなかった。


「ねぇ。」


 先咲さんが、顔をうつぶせたまま声をかける。


「な・・・何?」


 比較的冷静さを装って返事をしたつもりだったが、若干声が上ずっていた。


「昨日のアレは何?」


「昨日のアレって・・・あぁ、罰ゲームだよ。ごめん、先咲さんには悪いと思ったんだけどさ・・・。」


 わざと、とぼけてみる。


「とぼけないで!そんなことはどうだっていいのよ。」


 やっぱり、違うか・・・。


 ってういか、そんなことって・・・。


 コレでも、一世一代の愛の告白だったのだけど・・・。


「・・・ごめん。」


 何で、あやまっているのだろう・・・俺?


「桜沢くん・・・あなた、魔法使いでしょ?」


 核心をつかれた。


 どうやって誤魔化すべきか・・・。


「いや、違うけど・・・。」


「嘘言わないで、昨日私はあなたを見たわ。黒ローブを着て、杖を持ったあなたを!」


 あ~・・・確実に覚えられているな・・・。