図書室は静かで物音一つ立てられない雰囲気だった。


 窓際、後ろのほうの机。


 そこで、先咲さんは机にうつ伏せて眠っていた。


「罠?」


 あまりに無防備な姿に、思わず深読みしてしまう。


 だけど、好都合といえば好都合だ。


 悠人の狙いは先咲さんの髪の毛。


 魔法使いは、相手の名前と顔を知ればその相手を殺すことができる。


 髪の毛か血液を手に入れれば、相手の全てを知ることができ、相手の臓器でも手に入れれようものなら、相手のコピーを作り、自らの意のままに操ることが出来る。


 つまるところ、魔法使いは髪の毛一本手に入れるだけで相手を殺すことが可能というわけだが、もちろん、悠人は先咲さんを殺す気など毛頭ない。


 欲しいのは、彼女が自分のコトをどれだけ分かっているのか。


 ソレを知るために、悠人は彼女の髪の毛を手に入れる必要がった。


「悪いとは思わないでくれよ。」


 小言で、それだけ口にして、ゆっくりと先咲さんの髪の毛に手を伸ばす。


 瞬間。