由良が去って行った後の教室。


 一呼吸をおいて、悠人もその場を後にする。


 一応、友人たちにはトイレとは言っておいたが、おそらく昼休み中に戻ることはできないだろう。


 先咲美琴は教室にいなかった。


 だとしたら、考えられる場所は全部で三つ。


 さて、どこから回ろうか・・・。


 二年生の教室が立ち並ぶ廊下を歩きながらそんなコトを考えていると・・・。


「あれ?桜沢くん?」


 唐突に声をかけられて足を止める。


 声のした方向に顔を向けると、そこにいたのは先ほどまでの噂の女性、小松真琴。


 由良のことが好きなんて、誰が見たって分かるのに・・・。


 じれったいなぁ。


 いっそのこと、魔法でこいつらくっつけてやろうかな・・・。


 そんなことしたら独身貴族は俺と吉田だけになるけど・・・。


「あれ?小松さん、どうしたの?」


「あ・・・いや・・・。」


 そこまで口にして言葉に詰まる小松さん。