「おはよう、由良。」


 朝、自分の席に腰掛けると、隣の席の真琴が声をかけてくる。


 茶色に染め上げた髪を肩まで伸ばし、大きな瞳をクリクリしている。


 薄いピンクのふちのメガネとあいまって、とても可愛らしい顔をした女生徒だった。


 今朝のことが脳裏に浮かぶ。


「おぅ、おはよう真琴。今日の英語の宿題やってきたか?」


「え?宿題・・・さて・・・なんのことかなぁ?」


 ・・・真琴・・・お前もか・・・


「仕方ない・・・お~い、悠人。」


 席を離れて、友人のもとに向かう。


 彼の名前は桜沢悠人。


 高い鼻に、彫りの深い顔はどこか日本人離れしている印象を受けるが、名前を聞く限り生粋の日本人。


 小学校の五年生のときにこっちに転校してきてから、かれこれ5年来の友人だ。


「ヤダ。」


「まだ、何も言ってない。」


「ヤダ。」


「日本語を話そう、悠人君。」


「宿題は自分の力でやろう、朝倉君。」


「うッ・・・そこを何とか頼みます。悠人様。」


「500円」


 そう来るか・・・・。