N県 某所 AM 6:00


 朝倉家の地下には射撃訓練所があり、毎朝そこで射撃訓練をするのが朝倉由良の日課である。


 もちろん、非合法・・・。


 
 一発目、的は銃を構えたアメリカ兵の写真。


 頭と胸をコンマ零秒の値で撃ちぬく。


 狙いは外さない・・・。たとえ、的がなんであれ・・・。


 続いて出てきたのは、日本人。はやり、銃を構えている。


 頭と心臓を瞬時に撃ちぬく。


 そのような写真がしばらく続き、6番目に出てきたのは、どこにでもいそうなサラリーマン風な男。


 ためらいはない・・・。


 でも、それは、写真だからか?・・・これが・・・ほんものだったら?


 そんなことを考えながら、由良は写真を撃ちぬく。


 女、老人、子供・・・すべてを由良は零コンマのスピードで撃ち続けた。


 コレは写真なのだと自分に言い聞かせて・・・。


 しかし、最後に出てきた写真。


「真琴・・・。」


 大切な・・・クラスメートの名。


 手元がぶれる以前の問題だった。


 トリガーにかかった手は、最後まで引けなかった・・・


「由良、ゴハンよ~。」


 母親に呼ばれて、今日の朝練は終了。


 後味がいいものではない・・・。


 分かってはいても、やめることは決して許されなかった。