“我、記録の長、座天使ラジエル様との謁見を望む”


 目を閉じて、再び呪文詠唱。


 今回行うのは記憶の消去。


 だとしたら、召還すべきは『神の秘密』という名を持つ、天の記録係であるラジエルだ。


 天使の召還はコレがはじめてではない。


 いや、むしろ魔法使いにとっては天使と悪魔の召還は日常的な作業と言ってもいい。


 コレこそが一般的に言われている魔法の実態。


 祭壇こそが唯一、悠人が魔術師でいられる空間に他ならない。


 他にも、魔剣を作る、護符を作る。


 ・・・・そして・・・呪いをかける・・・。


 全て、この部屋で行われることであり、この部屋から一歩外に出てしまえば、悠人はどこにでもいる一般人と何一つ変わりないのだ。


 逆をいうなれば、魔法使いとは自分専用の祭壇を持ち、そこで自由に魔術を行えるもののコトを指す。


 さすがに限度があるものの、少なからずこの部屋にいる以上、悠人は紛れもなく魔道師だった。


 先ほど姉貴が見ていたような杖を使って、不思議な現象を起こすのは、魔法ではなくてただの奇術だ。


 この違いが分からないあたり、魔術より、霊術を重んじた東洋の島国と言ったところだろう。


 まぁ、最近では霊術の区別すらつけられるかどうか不明だが・・・。