「何だ?何が起こった?」


「敵襲か?くそっどこの組のモンだ!」


 馬鹿か、こんな状況の中で、声を出すなんて、自分で自分の場所を教えているようなものじゃないか・・・。


 由良は、声のした方向に一直線に向かうと、両手に構えたトンファーを振り回す。


 瞬殺。


「なっ!」


 声もなく倒れる男たち。


 殺してはいないが、死んでいても別に構わないような気がした。


「誰だ?誰がやられた。」


 これ以上、ここに留まる必要はない。


 見取り図は、頭に入っている。


 ボスがいる部屋もだいたい見当が付いているんだ。


 由良は、一気に一階のロビーを駆け抜ける。


 発砲音が、何度か聞こえたような気がしたが、由良には当たらなかった。


「エレベターだ。エレベターを抑えろ!」


 誰かが叫ぶ。


 誰がそんな安直な手を使うものか。


 由良は、ロビーの奥にある階段を一気に駆け上る。


 一階の二階の間に障害はなかった。


 追っ手が現れたのは三階あたりから。