魔道師と暗殺者


「・・・どういうことですか?」


 その言葉に、顔をしかめたのは真琴だけではない。


 そこは・・・・・10年前から、どこぞの法人団体が入っているビルのはずだ。


 まさか・・・。


「もしかして、そこに美琴と桜沢くんが、いるとか?」


 真琴が身を乗り出してくる。


「シャーリーが言うコトにはだけどね・・・。」


 分かってる。


 カラスの言い分を信じるなんて馬鹿げている。


 しかし・・・・・・可能性は十分以上にある・・・。


 お姉さん・・・もしかして、あなた、本当は魔法使いなのでは?


「だったら、すぐにでも行って確かめて来ましょうよ!」


 確かに、可能性があるのなら行くべきだ。


 しかし・・・。


「どうやって?」


 お姉さんが奥深い笑みを真琴に向けた。


「どうやって・・・って・・・。」


「そこに行って『あなた、誘拐犯ですか?』なんて聴ける訳ないでしょ?潜入して、忍び込むにしても、そんなニンジャみたいな真似できるわけでもないし・・・。」


 実は、お姉さんが口にした二つのことを自分なら出来る。


 相手に聞くには、誰か幹部を一人捕らえて、拷問なり自白剤を飲ませれば良いし、ビルに忍び込むなんざ、自分には日常茶飯事の出来事だ。


 だが・・・ここで口にするべきか・・・。


 いや、それで黙っては結局あの時と同じではないか・・・。


 二度と躊躇しないと決めたんだ。


 後悔しないために・・・。