「そういう事情の家庭なんだよ。深く聞いたら失礼だろう」
これは悠人の弁。
過去に自分も聞こうと思ったことが一度あったが、その一言を聞いてから、それ以上、この話題には触れないようにしている。
もっとも、調べようと思えば自分ならいくらでも調べられるが、そこまでやっては友人失格だろう。
「まぁ、私たちもうまく説明できないしね・・・ソレよりどうしたの、由良くん。女の子をこんなトコロに連れ込むには、まだ時間が早すぎない?」
どういう意味だ?
「そんなんじゃないですよ!・・・それよりエリザベス姉さんこそ、こんなところで何をしていたんですか?」
とりあえず話題をそらす。
さすがは大人の女性。
油断ならない攻撃力を持っている。
「ん~・・・ちょっと、シャーリーと話をね・・・。」
口にして、姉さんは顔を上に上げる。
お姉さんの目線を追ってみて、そこにいたのは、一羽のカラス。
なんとなく、あの時の魔法使いが連れていたカラスに似ていると思うのは気のせい。
由良にカラスの見分けなんて出来ない。
もしかして・・・。


