「大丈夫?由良?もしかして、まだ調子悪いんじゃない?」


 そう言って、真琴は本当に心配そうな顔をして自分を覗き込む。


 その姿は本当に可愛いはずなのに、今はそれぐらいで感情を揺れ動く余裕すらなかった。


「大丈夫だよ。それより、せっかく来たんだから、見てこよう。」


 正直、ここには何十回と足を運んでいる。


 警察が捜査を引き上げてからはもちろん、捜査中も何度も警察の目を盗んでは手がかりになるものはないか、探し回った。


 しかし・・・ソレぐらいで、見つかっていたら、今頃こんなに悩んでいない。


「すごいよねぇ~・・・前来たときは落ち葉だらけだったのに、こんなに片付けられて・・・。」


 わざと、明るく振舞いながら雑木林を進む真琴の姿が見ていて胸を締め付ける。


 自分に心配かけまいと必死なのだろう。


 ソレぐらい、見ていれば分かるというのに・・・。


「そうだな・・・前着たときなんて・・・。」


 そこまで口にして由良は押し黙った。


 ソレは、神経を集中させていたからこそ、聞こえた言葉。


「・・・・・・・・・そう、ありがとう。ご苦労様。」


 この森に自分たち以外の誰かがいる。


「どうしたの?由良?」


 突然黙った由良に不思議そうな表情を向ける真琴。


「静かに・・・。この森に誰かがいる。」


 人差し指を口につけ、出来る限り、小声で話した。