貴方こそ、そんな女性用の香水の匂い、どこで知ったんですか。
事後に彼に着せられた、彼のシャツの匂いを内緒ですんすんと嗅ぐ。変態染みた行為だと自分で呆れるが、彼の匂いがわたしはとても好きだ。付き合う前、彼と出会った時からそうだった。
なのに、彼の匂いはいつしか甘い、誘惑するような女の匂いに変わっていった。彼の首筋にキスマークがついている日もあった。それが、まるで見せつけられているようで、悔しかった。
彼女はわたしだ。なのに何故彼は他の女を抱く?わたしは彼と出会ってから、彼以外の男に抱かれてはいない。なのに、何故。何故わたしを鎖で繋ぐ?
彼が本当に私のことを好きなのかわからなくなった日から、私は彼のことが嫌いになった。だけど、優しくされればその分嫌いだという想いが薄れていく。何てガキなんだ私は。
21歳と17歳の差なんて、そう簡単には埋まらないものだ。
この間、オフの日以外に久しぶりに彼と会った。彼はユニフォームのまま、同じチームの人達数人と一緒にいる所をわたしは見つけて、思わず「あ」と言ってしまった。その声に気づき、彼がこちらを向く。私はすぐに顔を逸らした。隣にいた友人に「何、知り合い?」と言われた。何て言ったらいいのかわからなかった。
すると、彼らの会話が驚くほどよく聞こえてきた。「あの高校生、お前の知り合い?」1人のチームメイトが青柳さんに声を掛ける。少し間があって、青柳さんの声が耳に入った「知らねーよ」
それから彼はこちらを見向きもしなかった。まるで他人のような扱い方だった。なんで、私はあなたのお家に住んで、あなたに料理を作って、あなたと寝て、あなたと抱き締め合っているんですよ。
と言いたかったが、下唇を上の歯で噛んで、我慢した。ついでに、涙がでかけたのも堪えた。そして友人に言った。「ううん、知らない」……

