おそらく、お母さんは私が本当に彼のことを愛していて、彼が本当に私の事を愛しているように見えたのだろう。青柳さんが錯覚させたのかもしれない。THE・青柳マジック。
それからわたしは必要最小限のものを小さなバックに詰めて家を出た。
「ちょくちょく帰ってきなさいよ」「青柳さんのオフの日以外はなるべく帰ってきます」
私は別にホームシックにならなかった。だが、母親はあの広すぎる家で1人で住み、淋しくないのだろうか。わたしは彼がいないこの部屋に1人でいるのは正直淋しい。

オフの日に帰ってくる彼は疲れが溜まりに溜まっていて、私はよくマッサージをしていた。そして突然手を掴まれて、押し倒されて、無理矢理事に及ばれる。これがいつものパターンだ。だが、その時にわたしの「淋しい」という気持ちは彼という存在で埋め尽くされていった。荒々しく、だけど、どことなく優しい彼の頬に触れて「好き」と呟いたら、「お前、こんなのどこで知ったんだよ」と睨みつけられた。