ボタンを一つ押して携帯を耳に近づける。
「も、もしもし」
瞬間、耳にものすごい雑音が入ってきた。
うわっ、と、思わずわたしは耳から携帯を離す。
離しても聞こえるがやがやとした音の中で、1人の声だけがよく聞こえた。
「おい、ゆうり、友里!」
彼の声だ。わたしはまた耳と携帯をくっつけた。
「はい」
「聞こえてっかー?」
「聞こえてますよ」
「あのさーさっきのメー」
突然彼の声が消えた。メーって何だメーって。
わたしはよくわからないいままぽーっと彼の声を待っていたら。次に聞こえてきたのは彼の声ではなかった。
「もしもーし、青柳の彼女さんかなー?」
「あ、え、えっと」
「うおー声が若々しい!さすがJK!」
「ええ、その」
青柳さん、は?
と聞く前に青柳さんを「モチさんまじやめてくださいよ!つーかおめぇら離せ!」という声が聞こえる。これはマジ声だ。こいつマジで困ってる。ていうか離せってことは誰かに押さえつけられているのかな?と、なんとなく向こうの状況は読めた。モチさんというのは今の声の主で青柳さんのチームメイトで、青柳さんが慕っている人なのかな、さん付けだし。なんか面白いなぁ、楽しそうで何より。

