途端に携帯を閉じる。呼吸を整えた。そして頭の中を整理する。
……いや待てよ、そんな、ありえないことが今起きたぞ。
彼のメールに、彼のメールに
「好き」が入っている。
その後もぼんやり見えた。好きに続く2文字は人間が喋る時に語尾につけるもので、語尾につける言葉で一番多く使われるんじゃないかと思えるものだ。最初が濁音で、最後がすいかの「す」。ーーつまり、彼のメールに書いてあったのは紛れもなくこの4文字。言わせるのか?私に言わせるのか?……す、好きです。と、まあ自分は自分と会話的なことをして何が楽しかったのかが不明だが自然と顔がにやけた。が、緩む口元はすぐに引き締まる。
待て。考えろ。彼が私に敬語を使うわけがない。彼に失礼だが彼は本当に尊敬する人や、大切な時にしか敬語は使用しない人だ。わたしはあれだけ酷い扱われ方をしているわけだから、今更マイスイートハニーなんて思うわけがない。万が一思っていても言うわけがない。彼は本当に不器用な人だ。愛情表現が下手な人だ。なのに、こんな突然、別人のようにーーー
と考えていたら携帯の着信音が部屋に響いた。光の速さで携帯を手に取ると着信は彼から。まあこんな時間帯に電話するかしてくるのかは彼か母親かある友人しかないけれど。

