「なあ、知ってるか?ハル」
「んあ?」
遅刻しそうになり息を切らして学校に着くと、田沼がさらっと言った。


「佐野、死んだんだってよ」


「え」
佐野…?
「佐野って、佐野春海?」
「ああ、自殺らしいぜ」

自殺?そんな馬鹿な。

「佐野が自殺なんて有り得なくないか?」田沼の言葉に耳を疑う。

「それが本当なんだって。風呂場で手首切ってたらしいぜ」

頭の中で「佐野春海」を思い浮かべる。
頭が良くて、かっこよくて女子からも男子からも好かれて、まぁスポーツは出来ないみたいだけど、同じクラスの原田幸子って言うめちゃくちゃ可愛い彼女がいて…。

てか俺とは全然正反対で。
悩みなんか無さそうだし。
自殺なんか無縁の人種だと思ってた。