ドクンッ…

「…っ。」
「美佳ちゃん?どうかしたのか?」

やだ…。
今きちゃうなんて。
物凄い吐き気がする。
"あの時間"の前兆だ…っ。

「気分悪いのか?トイレ…。」

ヨタヨタと歩く私を、グッと引っ張って男女誰でも入れる、広めのトイレに連れて行ってくれた。

「…っ。う…。けほ。けほ。…。」

"あの時間"になると急に悲しくなって、頭が痛くなって、涙が止まらなくなって、過呼吸になる。

「苦しいか?辛いか?大丈夫か?」

心配そうに、私の顔をのぞきこむ。

きっと私、酷い顔してた。
でも過呼吸で手足が痺れて、目がかすんで、先生に支えてもらってやっとの状態。

どうこうできる余裕なんてなかった。

「…。」

先生、笑って下さい。
私、今日は決めてたんです。
先生に幸せや笑顔を、沢山あげるんだって。

「大丈…。…です…ら。はぁ、はぁ…。」
「…うん。」

どれくらいたったのかな。
ようやくおさまって、手洗い場で顔を洗う。
鏡に映った私の顔は…まるでもう世界が全て終わっちゃったみたいな顔。

先生はわざわざ、私を家まで送り届けてくれた。

「大丈夫…じゃないよな。今日はもう、ゆっくりー…。」

"明日"なんてないの。
だから"今日は"だってないの。

「先生っ…。今日で、お別れです。今日が"最後の日"です。」

先生を…大好きな先生を、この手で突き放した。

「また何言って…。」
「嘘じゃないです。私、今日…楽しかった。すごく楽しかったです。」

楽しかったから…。
今日が"最後の日"でいいの。
後は消えちゃうだけでいい。

「…じゃあ、もう1つの条件も覚えてるよな。」

"先生の目の前で死ぬ事"。
そう、先生が守り切れなかった人として。