「本当に門限、間に合わなくなるから帰ろう?」

違うの…。駄目っ。

「前、向いてて下さい!…ちゃんと言いますから。」

分かったって、前を向く先生。
すーっと深呼吸する私。

「手…え…えぇ?」
「ん?」

「…。」
「行こうか。」

待って、先生。
私がずっと言いたかった事…。
ちゃんと言うから…!

「…手。繋いでも…いいですか?」
「ん?いいよ。」

"俺の手冷たいけどなっ!"なんて言いながら、手を差し出してくれた先生。

私は焦って、先生の手の甲に手の平を当ててしまった。

「わ!あ…。」
「はい。」

優しく笑って、また手を出してくれた。
今度は間違えないで、そっと優しく先生の手の平に、手の平を重ねた。
力加減の分からない震える手を、ギュッと握ってくれた先生。

「ずっとこうしたかったのか。」
「…はい。」

友達と手を繋ぐなんて、何でもない事なのに…。
好きな人とは、こんなにも緊張するんだね。
初めて知ったよ。

いつも以上に帰り道が、もっとずっと続けばいいと思った。
終わらないでって。


「…もし、俺がこの手を離さないで、このままどっか連れ去っちゃったらどうする?」

先生の手の力が少し、キュッてなったのが分かった。

「先…生?」
「なんて!ほら、もう駅着くな。」

嘘なの?
ねぇ先生…今のは全部冗談?
自惚れちゃ駄目ですか?