「瑠李、また外見てる」


「うん…」


「でも今日雨が降ってるから桜の木…霧で見えないね」


「うん…」


今日はあいにくの雨。


だから桜の木の下に行けない…


颯くん…今日雨が降ってるけど…


あの桜の木の下に来てるかな…


来てないよね…ってか、こんな雨の日に来れるわけないよね…


あたしは一つ小さく溜息をついた。


「瑠李、どうしたの?」


「…ううん。…何でもない…」


「そう?」


「うん…」


今日…


桜の木にお願い出来ないな…


あたしはこの後、今日一日外を見る事はなかった。




「じゃあね、瑠李」


「うん。バイバイ…」


瑠李は学校の門から走って出て行った。


あたしは傘をさしていつもの道を歩いて家に向かう。


いつもならここから見える桜の木は凄く綺麗なのに、


今日の桜は濁った色をしてる。