かたっぽうの恋

泥だらけのユニフォームを着た秀ちゃんが真っ青になって駆け寄ってきた。




「…しゅ…ちゃ」



あ…、桜の花びらが
ひらりひらりって落ちてきたよ。








―――――――――…



秀ちゃんの腕の中で、私は意識を失った。








「………?」





気がついた時は、病院のベッドの上だった。





パパとママは酸素マスクをした私が目を覚ましたのを知ると、泣きだした。



病室の入口の所に、秀ちゃんがいた。



(パンッ!!!)



あっ……、

秀ちゃんのパパが、秀ちゃんのほっぺを叩いた。



「ちぐさちゃんを置き去りにしてっ、自分がどれだけ大変な事をしたかわかってるのか!!」



歯を食いしばって、涙を堪える秀ちゃん。



おじさん、秀ちゃんを叱らないで…、私が悪いの。


私がわがまま言ったの、でも秀ちゃんは遊んでくれたよ。





「しゅう…ちゃん」


私は、点滴の線がついた腕を伸ばした。




「……ちぐさ、ごめん…なさい」


私の所に来ると秀ちゃんの目は涙でいっぱいになっていた。



「しゅー…ちゃ。」



伸ばした手で秀ちゃんの泥だらけのユニフォームにくっついていた桜の花びらを摘んだ。










「秀ちゃん、みー…、つけ、…た」










「っちぐ、さ…っごめ、おれぇ~っごめぇん!」



まだ幼い秀ちゃんの小さな肩は震えていて、ワンワンと泣き出した。



自分のせいで死んだら…、
どんなに怖い思いをしたんだろ。




「おれ、もう、ちぐさ置いていったりしないからねっ、ずっとずっと、ちぐさの近くにいるからね……早く元気になって、」



「うん…、秀ちゃん…
……約束だよ」





その日から、秀ちゃんは
私の言うことを聞いてくれるようになった。