かたっぽうの恋


兄は長々しい私の話しを、終盤にさしかかるにつれて、うんともすんとも言わず聞いてくれた。


「…………」


「私の大好きな二宮くんには、好きな子がいるの、私失恋したのっ!!」



「…………」


「私のお話は以上です、お聞きいただきありがとうございました」


私は深々と兄に頭を下げた。




「この、アホんだら」

(べしっ!!)


「きゃうっ!!」

兄に後頭部を叩かれた。



「え、叩いた?お兄ちゃんがたたいた?!」


兄に手をあげられることなんて、5歳の時に兄の髪の毛をバリカンで刈ってしまった時以来。



「叩いたんじゃない、押したんだ」


おっ押した!?
だとしたらなぜ???



「失恋したなんて、甘ったるい!!」


「わぁっ!!」


兄は不安定なベッドの上で立ち上がった。 ベッドが揺れる。



「眞央に好かれといて二宮って男はなんて、馬鹿なやつなんだ!」


話し終わってから思い出した。



お兄ちゃんは恋愛を相談していい人じゃなかった。



「そんな男、こっちから願い下げだよ!兄ちゃんは事実とは認めないぞ」


そういって、兄はベッドから畳の上に飛び降りる。


「よいしょ」




よく動く兄です。