かたっぽうの恋


二宮くんを追いかけると、
待ち合わせ場所と言っていた
中庭にたどり着いた。


青々とした芝生が一面に広がり、
クヌギの木が煉瓦道を挟んで並んでいる。

その煉瓦道の上を歩き、
中庭の前にある図書館の入口前にいる女子に近づいた。


ショートヘアに小柄で、 眼鏡。


二宮くんが手を振り、

「ちぐさ!」

と呼んだ。



なっなな!!、
名前を呼び捨てしたよ!?


親しいんだ!!




あの子が月島さんだ。



月島さんは、両手で大事そうに抱きしめていた本を片手に抱え直し、

自由になった方の手を振った。



……キュン、



なんだろ、地味っぽいんだけど、
なんだか可愛い。





でも心配するような事はなさそう!

きっと授業の事でわからないことがあったんだよ、
それを質問するんだ。


二宮くん、まじめだし!



………いや、授業って、
今日は入学式だったってば!!


なんてひとりツッコミしてる間に、
ふたりはどこかに移動しようとしていた。



おっと、いけない!
追わねば~って、
私、本当になにしてるの?




その時、私の目に写りこんだのは、
今まで私が見たことのない二宮くんの顔だった。