かたっぽうの恋



入学式での校長先生の長い話は苦ではなかった。


私はずっと、二宮くんの事を見つめて、
心の中で告白の練習をしていたんだもん。


すると後ろから敦子が小声で、

「眞央?耳が赤いぞ、風邪か?」


「平気、平気」


敦子、風邪なんかじゃないよ、
これは恋の病のせいなんだよ。







そして入学式が終わり、
一旦、教室に戻って、担任の簡単な自己紹介や、明日からのスケジュールの話をした。



「はぁい、今日はここまでです!
明日から楽しい高校生活はじめましょう、それでは解散!」


担任がそう言うと、クラスは一斉に賑やかになり、
携帯でアドレスの交換をしたりした。



とうとう来たのね、
この時が!


生唾をゴクンと飲み込み、
席を立つと、敦子と美保が


「眞央、帰るか!」

「ファミレス行こうよ~」


ふたりに話すのを忘れていた。



「あ、あのね!
私、その……その」



う、なんか恥ずかしくて上手く、
言葉に出来ないよ!



「あ?、どしたん?」


「眞央、顔が真っ赤ぁ~……」




「「あ…」」



敦子と美保の声がハモった。




「もしかして、眞央
あんた、二宮に、こくは、く?」



敦子に図星をさされた私は、顔がカァァっと熱くなった。


「シー、やだぁ敦子ぉ」


隣に座ってる二宮くんにきこえたらどうするのよぉ!


「お!すまん…」


チラリと三人で二宮くんの様子を見た。



「――ん? どうかした?」


私たちの視線に気がついて、キョトンと目を丸くして言う、二宮くん。



「き、気にすんな二宮!、なんもねーよ、学ラン似合ってんじゃん」


敦子がどきまぎとフォローする。
私と美保も大きくうなづいた。


「さんきゅ、変なやつら」


そう言って、二宮くんは机に置かれていた新しい教科書を机に、かばんにしまい込む。




よかった、聞こえてなかったみたい。