かたっぽうの恋


そんなお兄ちゃんの手を、先生はがっちり掴み。腰で反動をつけると、足でお兄ちゃんの腰を挟んだ。


「抵抗する気かお前っ!?」


「それより無事に妹ちゃん送って来たんだから、ご褒美ちょーだいよ!」


「今はそんな話ししてるんじゃないんだよ!!」


「修ちゃん。俺、怒った修よりより、笑ってる修の方が、好きだよ?」


「嬉しかねーんだよ。」

挟まれた足に気を取られたのか、お兄ちゃんは掴んでいた手を緩ませた。



いたずらをする子供のように、ニヤッと先生が笑う。



緩んだ隙をついて先生は身体を反り返って、大理石の床に両手をついた。両手に全体重がかかり逆さ状態に、そして腰を捻らせると そのままお兄ちゃんから足を離して、ひょいっと着地して頭を起こした。



私もお兄ちゃんも、目がテン。


先生はニッコリ微笑むと、



「とりあえず。お腹空いた」



先生の身軽さと調子の良さに、私は苦笑いをした。


お兄ちゃんは、こんな先生に慣れっこなんだろう。

深いため息を吐いて、
「あがれよ。もう」


やった!と目を輝かすと、先生はササッと靴を脱いで家に上がった。


お兄ちゃんの肩に腕を回し、じゃれながらリビングへと入っていった。