「お、お兄ちゃんだよ」

「お兄さん?」


私は瞳を逸らし、咄嗟に嘘ついた。心臓ってこんなに動くんだ…、ばっくんばっくん鳴っている。




「そうなんだ、仲良しなんだね」


月島さんは、可愛く首を傾けてにっこり笑顔を見せた。


私は、その純粋な笑顔に心が痛んだ。



「え…と月島さん、なにしてるの、散歩?」



あたふたと私は月島さんに質問をぶつけた。

話題を逸らしたかった。


「うん。さっきまでは秀ちゃんも一緒だったけど…」


私…知ってる、けど知らないふりをした。


それが空気を読むと言う事でしょ?


河川敷の土手に、鈴虫の合唱が響き 柔らかい風がふわりと吹いた。





「そうなんだ!二宮くんはどこに?」



あたりをわざとっぽく、キョロキョロ見渡してみる。





「……っ…」



――――お?、

…ちょっちょっ!



月島さんが肩を揺らして、俯き、涙を零している。



思わず、私は駆け寄った。




「どうしたの月島さん!?」


すると、涙を拭いながら
月島さんは話す。