……葵が泣いてた…
俺は、ただただ心配する事しか出来ない…
葵を泣き止ます手段は、俺にはないのかも知れない…

葵が出ていった扉を眺め唖然と立ち尽くすしかなかった。


「………将。」

「…んだよ、奈美…」

「葵と、何があったの?」

怒った口調で、それでいて何処と無く悲しみを含んだ声色で俺に問いかける。

【何があった…】

そんな事、俺にもわかんねぇよ…!
葵が泣いてたから…、
悲しそうにしてたから…!!
無意識に葵に話しかけてた。

「……わかんねぇ」

「…………は?」

「だから、俺にもわかんねぇんだよ!!」

「わかんないって、どう言う事よっ!!!葵は泣いてたのよ?!」

泣いてたのはわかってる。
でもその涙の理由がわからねぇんだよ……

「将、真剣に答えて?アンタは葵を泣かせたの…?」

奈美が真面目な顔をして俺に言う。

……俺は………

「泣かせてねぇよ、屋上に来たら…葵が泣いてたんだ…っ」

葵の泣き顔を思い出すと、胸が締め付けられるような感覚がした…

「なら、良いわ…将、葵を探しに行くよ…!!」

「あぁっ!!!」

俺達は屋上を出て、飛び出して行った葵を探すことにした。





~葵side~
『………将君…』

ポツリと彼の名前を呟く。
叶わぬ恋なのに、将君にどんどん惹かれてく……
好きになっちゃいけないのにっ…

『私、どうしたら良いんだろ…っ』

これから、どうやって二人と仲良くしたら良いの…?
どうやって、一緒に居れば良いの?

『もう、わかんないよっ…!』

二人の事を考えると、胸が苦しいよ……
この想いが抑えられなくなってきてる。
私にとって、奈美ちゃんは大切な友達。
だけど、将君も私にとっては大切な人……

二人の事を、遠くから見守る事しか、出来なくなるのかな…?

『そんなの嫌だよぉ…っ。将君、奈美ちゃん…っ』

震える声で小さく、
彼女達の名前を呼んだ…