「……なんでも、ないよ…っ?」
涙を止めたいのに…
止まらないよ……
「………葵」
優しく私の名前を呼ぶ、将君。
将君に名前を呼ばれると、本当に涙が止まらないよぉ…
「…将、君…」
将君の名前を呼んでしまった…
私は将君と奈美ちゃんを応援しなきゃいけないのに…
二人きりの屋上…
風の音もなにもしない…
まるで、時が止まった感じがしたの……
「………っ」
《フワッ》
フワッ…?
「………?!」
私、将君に抱きしめられてるの…?!
顔に熱が集まる感覚がした…
あぁ、私…
顔が赤くなってるんだなぁ…
冷静にそんな事を考えていた。
「…泣くなよ…っ」
将君に言われ…
私はまだ泣いてる事に気づいた…
「……っ、…ごめん、ねっ…?」
「…なんで、謝るんだよ…」
将君の優しさに、どんどん涙が溢れてく…
もう、この気持ちを隠せないよ…っ。
言ってしまいたい…
でも、言えないよっ…!
「だって…っ」
「なにかあったのか…?」
「……っ」
言えない……
将君を前にすると、自然に口を開いてしまいそうになるの…
でも、将君は奈美ちゃんが好きなんだよね…?
だから…
私の気持ちは、迷惑になるだけなんだよね…
………将君……
