「ただいま―…」


靴を脱ごうとした時、使い古した革靴があった。



「…お兄さん!!」


私は勢いよくリビングに駆け込むと、お母さんの向かい側のソファに腰掛けている人に思わず笑みを零した。



「おかえり。彩芽ちゃん。」



「お兄さん…ただいま。いつ帰ってきたの?」


「さっきだよ。早く彩芽ちゃんに会いたくて…」


その言葉が嬉しくて次の言葉が出てこなかった。


「今ね、高校のことを聞いていたのよ。」


お母さんがお兄さんに紅茶のおかわりをカップに注ぐと微笑んだ。

「高校はとても充実しています。勉強は結構大変ですが…」


「あら!何言ってるの。いつもトップなんでしょう?」


そう言うと、お兄さんは照れたように微笑んだ。









お兄さんは私のイトコ。


私より3つ年上のお兄さんで、とても優しくて憧れる人。


高校は東京の名門に通っていて、母親と二人暮らし。
でもその母親が病気で緊急入院したため、私の家に居候することになったのだ。



叔母さんには悪いけど…これからお兄さんと一緒に暮らせるなんて夢みたい!



私はこれからの生活に夢を咲かせていた。