私は頷く。


美津枝は そう、と一言言った。





「私は優作の異変に気付いたから、優作も私に事を話してくれた。私が無理矢理言わせたんだけど…」


「…それで…?」


「優作はもう俺に構うなって言ったわ。」


美津枝は夕日に視線を移すと呟くように口にした。


私はその美津枝の横顔が悲しく霞んだ。



「…あなたは優作のことが好きなのね?」


「…はい。」


「私が嫌だって言ったら?」


「……私は、美津枝さんが優作を想う気持ちを否定したりなんかしません。」


真直ぐな目で言い放つと、美津枝は口を閉じた。



「でも、私は優作にあいにいきます。」

「あなたに何ができるというの?」







「…優作の過去を消すことはできない。でもこれからの人生をやり直すことはできます。側にいることができる…」


あぁ、声が震えているのがわかる。


私の頬は涙で濡れていた。



「私…まだ優作に伝えなきゃいけないことがあるの……!」




未熟なのかもしれない。


バカにされるかもしれない。


でも…信じて。




どうか……



「西区東山のアパートマンション…105号室。」








「えっ…?」



美津枝は静かにベンチに腰掛けると、時計の時刻を見た。