「…大丈夫?」


はっと見つめてしまっていたのに気付いた。


「ご、ごめんなさい!大丈夫です…っ。」



私は勢いよく立ち上がると、ペコッと頭を下げた。



「驚いたよ。急に転ぶから。」



“その人”は優しい笑顔を見せる。



…うわ…見られてたんだ…


顔を真っ赤にして俯いてしまった。



「あ。」



“その人”は何かに気付くと、私の足を掴む。


「ひゃっ…!?」


冷たい手からペッタリと何かが貼られた。



おそるおそる膝元を見ると絆創膏が貼られてある。



「…怪我してたよ。」


“その人”は私の頭を撫でると通り過ぎた。






「あ…あのっ…」


私は呼び止めると、“その人”は振り返る。





「何?」







「あ…ありがとうございます。…あのっ…お名前…」



「優作。」


「えっ!?あ…あやめ…彩芽です。見英 彩芽…」



“優作”と名乗るその人は、ふ と笑うとまた先へ歩いていった。








…い…行っちゃった…




私は立ち尽くしたまま、誰もいない道を眺めた。



その時に降っていた雪なんて目に入らなかった……